基礎演習 I 論理学

京都大学文学部の「基礎演習 I 論理学」(毎週火曜日16:30〜18:00)の授業Blogです。

論理学上級I 「ウソツキのパラドックス2020(傾向と対策)ー真理理論入門」(矢田部俊介)

スケジュール
受講対象者

哲学・形式言語学・計算機科学を専門とする大学院生以上を受講者として想定していますが、どなたでも参加することが可能です。閲覧はYouTubeからです。ただし、古典命題論理を完全性定理まで履修ないし自習済みであることが授業の前提となります。

授業概要

真理概念は、日常的に一般論を述べる時などに使用されるが、何も考えずに古典論理上で真理概念の無制限な形式を使用すると、ウソツキ文「この文はウソである」が定義され、ウソツキのパラドックスにより矛盾が導かれてしまう。
ウソツキのパラドックスはそのバリエーションも多く、真理述語に制限を加えてウソツキ文を定義出来なくしても、無限後退なバージョンであるヤブローのパラドックスが起こり、体系がω矛盾(有限性概念が非標準的になってしまう)になってしまうことが知られている。

そのため、本コースでウソツキのパラドックスに関する議論を概観すると共に、 標準的な解決法である古典論理上のタルスキの真理定義を紹介する。また、合わせてそのバリエーションであるヤブローのパラドックスについて、それが大きな問題となるデフレ主義的真理理論の文脈を再確認するとともに、ヤブロー文の振る舞いを計算機科学的に分析する。


各回の内容
[2020CAPE公開セミナー] 論理学上級 I-1「ウソツキのパラドックス・傾向と対策(総論)」
  • 京都大学大学院文学研究科 応用哲学・倫理学センター(CAPE)の公開セミナー「論理学上級I:ウソツキのパラドックス(傾向と対策)2020 ー真理理論入門」」の第一回
  • 3月13日(土)1000-1200

真理概念は、日常的に一般論を述べる時などに使用されますが、何も考えずに古典論理上で真理概念の無制限な形式を使用すると、ウソツキ文「この文はウソである」が定義され、ウソツキのパラドックスにより矛盾が導かれてしまいます。真理概念は自然言語の意味を考える上で重要なものであるだけに、多くの哲学者の頭を悩ませてきました。
公開セミナー第一回は、これまで提案されてきた主要な解決法(タルスキ、クリプキ、非古典論理の使用)を紹介し、何が問題になってきたかを概観します。

[2020CAPE公開セミナー] 論理学上級 I-2「タルスキの真理定義」
  • 京都大学大学院文学研究科 応用哲学・倫理学センター(CAPE)の公開セミナー「論理学上級I:ウソツキのパラドックス(傾向と対策)2020 ー真理理論入門」」の第二回
  • 3月13日(土)1400-1600

真理概念を無制限に使用するとウソツキのパラドックスにより矛盾が起きてしまいます。第一回でいくつかその「解決法」を紹介しましたが、その中でもっとも有名なのが、このタルスキの真理定義です。タルスキは、「真理概念」と呼ばれうるものなら満たしているべき性質(T-文)を明確化した上で、そのモデルを超限帰納的に構成して見せ、その真理理論が(相対的に)無矛盾出あることを示しました。さらに、そのモデルは、指示概念をベースとするもので、現在論理学の授業で習う「タルスキ・モデル」は、その流れをくむものです。
公開セミナー第二回は、タルスキの真理理論と真理定義(モデルの構成)を紹介します。

[2020CAPE公開セミナー] 論理学上級 I-3「デフレ主義的真理理論」
  • 京都大学大学院文学研究科 応用哲学・倫理学センター(CAPE)の公開セミナー「論理学上級I:ウソツキのパラドックス(傾向と対策)2020 ー真理理論入門」」の第三回
  • 3月14日(日)1000-1200

前回、タルスキの真理定義について紹介しましたが、タルスキの結果は大変素晴らしいものであり、その結果を受けて多くの哲学者が真理概念をどういうものであり、どういう性質を満たすべきかについて論争を始めます。その中で「デフレ主義」が台頭してきます。真理概念とは、タルスキの真理定義によって特徴付けられるような、最小限のものであるという主張です。デイヴィッドソンの批判の後、その批判を一部くみ取る形で、デフレ主義的真理理論は公理的な真理理論として形式化されてきました。
公開セミナー第三回は、デフレ主義的な真理理論とその公理的な形式化を紹介します。

[2020CAPE公開セミナー] 論理学上級 I-4「ヤブローのパラドックスと余帰納的定義」
  • 京都大学大学院文学研究科 応用哲学・倫理学センター(CAPE)の公開セミナー「論理学上級I:ウソツキのパラドックス(傾向と対策)2020 ー真理理論入門」」の第四回
  • 3月14日(日)1400-1600

前回、デフレ主義的真理理論について紹介しましたが、公理的な真理理論の研究の中で、矛盾を導かないまでも、困った現象が起こることがわかってきました。真理述語に制限を加えてウソツキ文を定義出来なくしても、無限後退なバージョンであるヤブローのパラドックスが起こり、体系がω矛盾(有限性概念が非標準的になる、つまりそのモデルには無限大のような自然数が含まれる)になってしまうのです。これは困ったことですが、その原因には、ヤブロー文の「まるでフラクタル図形のような」不思議な性質があります。
公開セミナー第四回は、ヤブローのパラドックスについて考察し、ヤブロー文の振る舞いを計算機科学的に分析します。