シラバス
題目:論理学演習
授業のテーマと目的
我々は「論理的」という言葉をよく使う。哲学においても、もちろん「論理的」であることが要求される。しかし、「論理」とはいったい何だろうか。これは、現代の哲学の大きな問題である。というのも、古典論理の体系以外にも、20世紀以降、多くの異なる論理体系が提案されているからである。それらの非古典的な体系が論理と呼ばれるなら、ある体系が「論理」と呼ばれるためには、どんな性質を満たしていることが必要だろうか。
本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説から始め、最小論理・直観主義論理・古典論理での論理式の証明とそのモデルを使った議論が出来るようにすることを目的とする。その中で、単なる記号の処理を行なう体系が「論理」と呼ばれるにはどんな性質を満たす必要があるかを考察する。
授業計画と内容
最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。
また、前期の後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。
後期の前半では、論理結合子の意味とは何かを、「証明論的意味論」と呼ばれる立場から考察する。具体的には、ベルナップの「トンク」の例を題材に、論理結合子の条件とは何かを考え、保存拡大性や証明の正規化といった論理学の基本概念を理解することを目指す。
後期の後半では、最小論理に論理規則を付加し拡張した論理体系を紹介する。つまり、最小論理に矛盾律、排中律と論理規則を加え、直観主義論理、古典論理の体系を得る。これらの例により、論理規則が加わるにつれて、論理式の証明は難しくなるものの、そのモデルは簡単になることを示す。また、その考察により、健全性や完全性といった記号とモデルの関係に関する基本概念の理解を目指す。
教科書
毎回ハンドアウトを配布する。
参考書等
シラバスで指定した参考書は以下の通り
- 作者: 小野寛晰
- 出版社/メーカー: 日本評論社
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Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study (Dover Books on Mathematics)
- 作者: Dag Prawitz
- 出版社/メーカー: Dover Publications
- 発売日: 2006/03
- メディア: ペーパーバック
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他に参考となる本は以下の通り
- 作者: 戸次大介
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2012/03/01
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- 作者: 金子洋之
- 出版社/メーカー: 産業図書
- 発売日: 1994/10/01
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また、Webからダウンロード可能な資料は以下の通り
- Lecture note of Logic (Helmut Schwichtenberg) http://www.mathematik.uni-muenchen.de/~schwicht/lectures/logic/ss10/ml.pdf
- 金子洋之氏作成 http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thb0442/winter05.pdf
成績評価方法
ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。
コメント
体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。〜とは何か、と考えるのはそれから。