基礎演習 I 論理学

京都大学文学部の「基礎演習 I 論理学」(毎週火曜日16:30〜18:00)の授業Blogです。

哲学(演習) /科学哲学(演習)シラバス

論理学1(講義)(前期 火5)(矢田部俊介)

  • 哲学(演習) (哲学専修 5141001)  
  • 科学哲学科学史(演習) (科学史科学哲学 8241005)

場所:文学部第5講義室

授業開始:4月9日(火)

授業の概要・目的

 本授業の最終的な目標は、受講者が論理的で明晰な思考に慣れ、何かを主張する際にはその主張がどのよ うな根拠に基づいているかを明確化し、抜けも漏れもない論証ができるようになることである。そのための練習の題材としては、哲学的論理学、そのなかでも 「論理とは何か」という問題をとりあげる。我々は日常、推論を行い、そして「論理的」という言葉をよく使う。もちろん「論理的」であることが要求される。 しかし、「論理」とはいったい何だろうか。日頃、無反省に、知っているつもりで使っている概念の意味を問い直すのは、哲学の重要な仕事の一つである。
本演習では、数学における定理の証明がシミュレートできる、「論理」と呼ばれうるような、記号を処理する体系(「形式的体系」)を紹介する。 具体的には、最小述語論理の自然演繹の体系の解説と問題演習を行う。

到達目標

 最小述語論理の自然演繹で、基本的な演習問題が解けるようになる。
このことを通し、形式的体系における演繹がどのように進むのかを理解し、同時に日常的な推論がどのように形式的体系においてシミュレートされるのかを理解する。

授業計画と内容

 最小述語論理は、論理結合子の導入規則と除去規則のみを持つ、基本的な論理体系の一つである。前期の前半は、まず最小述語論理の自然演繹の体系を紹介する。問題演習を通じ、各自が自然演繹の証明が出来るようになることが目標である。
また、後半には、最小論理上で算術の体系「最小算術Q」を例に、数学における多くの証明が最小論理で遂行可能であることを示す。同時に、原始再帰法など計算の基本概念を紹介する。

具体的な授業計画は以下の通り。

  1. 論理学とは何をする学問か
  2. 形式言語
  3. 最小命題論理の⇒-導入規則および除去規則
  4. 最小命題論理の∧、∨-導入規則および除去規則
  5. 最小命題論理の問題演習
  6. 遠回りのない証明
  7. 量化子と最小述語論理
  8. 最小述語論理の∀-導入規則及び除去規則
  9. 最小述語論理の∃-導入規則及び除去規則
  10. 最小述語論理の問題演習
  11. 形式的な自然数
  12. 原始再帰的関数と"2+2=4"の証明
  13. 再帰関数の数値的表現可能性
  14. 総合演習
  15. 形式的な論理学と言語の哲学

履修要件

特になし(ただし後期の哲学演習の履修は、本授業の履修が必要となるので注意すること)

成績評価の方法・基準

ほぼ毎回出題する宿題の累計成績に準じて行う。

授業外学習

授業資料は毎回、事前(1~2日前)に本website にアップします。学生は、授業前に資料にざっと目を通しておくことが望ましい。

教科書

毎回ハンドアウトを配布する。

参考書等

  1. 戸次大介 『数理論理学』(東大出版会

数理論理学

数理論理学

  1. 小野寛晰 『情報科学における論理』(日本評論社
  2. Dag Prawitz 『Natural Deduction: A Proof-Theoretical Study』

その他(オフィスアワー等)

形式的な体系を理解するためには、まず手を動かして練習問題の証明をやってみよう。記号の意味は何か、と考えるのはそれから。
※オフィスアワー実施の有無は、KULASISで確認してください。